羽海野チカの世界展 ― 2017年04月01日 21時44分
デビュー作の長編漫画『ハチミツとクローバー』や、現在連載中の『3月のライオン』の原画を中心に、150点以上を展覧。
プロの仕事のクオリティの高さに、ため息が出るばかりでした。
カラー原画は、繊細で色彩が美しく、細部まで緻密に描かれていて、見惚れてしまいました。
中でも、『3月のライオン』10巻の表紙画には、深く感動しました。
雨がそぼ降る中、ひなちゃんがデパートの屋上の遊園地で傘をさしている絵。
背景に描かれた、チューリップの花が逆さになったような観覧車の緻密さといったら!!
パステルカラーの色彩効果もあって、やさしい物語世界へ入っていけそうな感覚を覚えました。
また、ネームの展示もありました。
『3月のライオン』9巻収録の「あたらしい年」。
4回もブラッシュアップを重ねて、計5本のネームを描かれているのには驚きました。
これよりも更にブラッシュアップされることもあるとか。
読者が読むのは短時間ですが、作者が推敲を重ねて1話を創り出すまでの時間は、どれだけかかっているのでしょうか。
羽海野先生が、途方もない時間を費やして生み出した作品だからこそ、読者の胸を打つのかもしれません。
これがプロの仕事というものなんだなと、唸りました。
どの原画もずっと眺めていたかったのですが、展示数が多いので、途中からペースアップ。それでも3時間くらい鑑賞しました。
やさしくて可愛らしいだけではなく、力強い絵もあり、羽海野先生の奥深い世界を堪能できました。
4月11日まで開催。
坂本龍馬展 ― 2017年03月11日 21時29分
高知県立坂本龍馬記念館所蔵の資料を中心に展覧。
龍馬の書簡から、ユーモラスな一面や、新国家樹立に東奔西走していた人物像が伝わってきました。
一番の目玉は、龍馬が最も愛した脇差、「銘 備前国住長船二郎左衛門尉勝光左京進宗光」(びぜんのくにじゅうおさふねじろうざえもんのじょうかつみつさきょうのしんむねみつ)。
備前国、長船派の勝光と宗光の合作(1505年8月)。
昭和4年に開催された、「土佐勤王志士遺墨展覧会」に坂本家より出品された際、目録に「此刀ハ龍馬が特に愛セシモノ也」と記されていたそうです。
小さな錆が所々あるものの、美しい輝きを放っていました。
龍馬の愛刀を制作された地で鑑賞できるのは、意義深いです。
その他、龍馬の書簡や、近江屋襲撃事件の時に龍馬の血が飛び散った掛け軸「梅椿図」などは、ほとんど複製品が展示されていました。
ちなみに昨年、京都国立博物館で開催された、「没後150年 坂本龍馬展」では、京博所蔵の原本が展示されていたようです。
しかし複製品とはいえ、せっかくの機会なので、書簡に書かれた内容をじっくり読みました。
姉の乙女に宛てた手紙では、内容だけではなく、書かれた文字からも親しみが伝わってきました。
女性宛の手紙はひらがなを多用して、読みやすくした気遣いが感じられます。
また、「日本を今一度せんたく」しようと東奔西走していた姿が、ひしひしと伝わってきました。
龍馬が暗殺されなかったら、今の日本の姿は少し違っていただろうか。
龍馬が、今の日本を見たらどう思うだろうかと、ふと考えてしまいます。
龍馬の息遣いが伝わってくる展覧会でした。
2017年3月12日まで開催。
モネ展 ― 2016年03月21日 21時30分

井上洋介 絵本の世界展 ― 2016年03月11日 21時37分
井上さんは、会期中の2月3日、胃がんのため84歳でご逝去されました。
心よりご冥福をお祈りいたします。
井上さんといえば、やはり『くまの子ウーフ』(神沢利子・作 ポプラ社)。
ウーフの原画と対面して、小学生の時に夢中で読んだ懐かしい記憶が蘇りました。
ウーフのトレードマークの吊りズボン、お母さんのふんわりと広がったスカート…。
物語の内容は、はっきりと覚えていませんでしたが、挿絵の印象が強く残っています。
物語のやさしい世界観が、井上さんのやさしい眼差しで描かれている。
ウーフを観ていると、なんだか古い親友に会ったような気持ちになりました。
そして、『くまの子ウーフ』を改めて読んでみたくなり、ミュージアムショップで購入しました。
この展覧会は、3月21日まで開催。
岩合光昭写真展ねこ歩き ― 2015年09月04日 21時03分
世界各地を股に掛けて撮影された、猫、猫、猫。
気候風土の違いが、猫の顔に心なしか表れているような気がする。
それとも、写真の背景が違うからだろうか。
日本に住む猫は、縁側が似合うような顔立ちに見える。
海外に住む猫は、ちょっとお澄まししているように見える。
でも、気ままに路地の間をすり抜け、行きたい所に行き、冷静に人間を観察して、眠いときは眠る。
それは、世界共通。
かわいいだけじゃない。神秘的で、哲学をしているような眼差しにも見える。
一瞬の美しさを捉えた写真の数々に、見入ってしまった。
お気に入りの一枚は、岩合さんの娘さんの白猫「にゃんきっちゃん」が、満開の桜の木をよじ登る写真。
私は、日本の猫の方に親しみを感じた。
写真展は、9月13日まで開催。
「佐野洋子 絵本の軌跡」展 ― 2014年02月18日 20時19分
1月31日に、ふくやま美術館で開催されている「佐野洋子 絵本の軌跡」展を鑑賞した。
絵本やエッセイなどの挿絵の原画311点を展覧。
2000年にも同館で、「佐野洋子の世界」展が開催された。
やはり何度観ても、佐野さんの色彩豊かな世界には魅了される。
展示室に入ると、『100万回生きたねこ』がお出迎え。
「100万回生きたねこ」というフレーズが頭に浮かび、本文を15分で書いたという佐野さん。
ちょっとふてぶてしく無表情だったねこが、白ねこと出会ってから表情豊かになっていく姿が、生き生きと描かれている。
「絵本ごとに絵柄を変えるのは当たり前」という佐野さん。
絵柄だけでなく、画材や塗り方も多彩で、なんて多くの引き出しを持っていた人なんだろうと驚かされた。
展示室で佐野さんの絵に囲まれていると、なんともいえない幸せな気持ちが湧き上がってきた。
まるで絵本の中に足を踏み入れたようで、胸が温かくなる。
鑑賞者も学芸員も笑顔になっている。
これが、佐野さんの絵が持つ力なんだと思った。
この展覧会は、3月2日(日)まで開催(月曜休館)。
ミュージアムショップで、『100万回生きたねこ』のマグカップを購入。
2匹のねこが寄り添う姿が、微笑ましい(*^^)v
リスベート・ツヴェルガー絵本原画展 ― 2012年06月09日 23時19分

『賢者のおくりもの』や『おやゆびひめ』、『人魚姫』など数多くの絵本の挿絵を手掛けてきたオーストリアの絵本画家。
『賢者のおくりもの』しか彼女の作品を見たことがなかったので、デビュー作「ふしぎな子」から「ノアの箱舟」まで150点の原画を間近で観られて、本当に感激!
繊細で優美、透明感と詩情あふれる世界に、あっという間に引き込まれてしまいました。
作品ごとの温度まで伝わってくるような、色彩豊かで深い水彩画。
「この線は、印刷に出るんだろうか?」と顔を近づけて観るくらい、細かい描写(あとで絵本を開いて確認した)。5ミリほどの顔の中に、ちゃんと目鼻口が描かれている。愛用の筆やペンが展示されていましたが、筆の細くて小さなこと!
米粒に雀の絵を書いたという北斎の逸話を思い出した(^▽^;)
幼少の頃の落書きやスケッチブック、未邦訳の絵本原画などの展示もあり、大満足の展覧会でした(*^^)v
福田繁雄大回顧展 ― 2012年03月30日 19時01分
笑いと驚き、そして感動の展覧会だった。
会場に入ると、「フクダのヴィナス」が出迎えてくれた(※写真は全て撮影可能な作品)。
誰もが知っているヴィーナス像に陰影をつけて、なんと自分像にしてしまっているのだ。
像の右側から見ると黒いヴィーナスにしか見えないのに、正面から左に立って見るとあら不思議、もう福田氏にしか見えない。
彼の写真と見比べてみると、そっくり! 視覚のトリックに驚く。
このシリーズで他にも多数展示されていたが、中でも「国芳のヴィナス」には拍手喝采したくなった。歌川国芳の「みかけハこハゐがとんだいい人だ」をヴィーナス像に描くとは、考えもつかない。眉目秀麗な顔が、裸の男たちで作られた滑稽なだまし絵にしか見えなくなってしまうから、美の女神も形無しである。
福田氏のこんな言葉が紹介されていた。
「僕がモナリザやミロのヴィーナスをよく引用するのは、世界中の人がそれを知っているからです。『知っている』ということは、コミュニケーションの半分以上をもう捉えているんですね。」
ただ単にユーモアと視覚のトリックを狙っているのではなく、万国共通の言語としてヴィーナスを用いているとは、なんとも奥深く感嘆することしきりであった。
「ランチはヘルメットをかぶって…」は、フォークやナイフ、スプーンなどを848本溶接した作品。一見金属の塊だが、後ろからライトを当てると、なんと影がオートバイに!?
見逃してしまいがちな影を主役にするとは、驚きの発想である。
「使えない食器」シリーズは、その名の通り実用出来ないものばかり。
「タコ足持ち手ポット」や「7つ注ぎ口のあるポット」など。
食器=使うものという常識を覆す発想。岡本太郎氏の「座ることを拒否する椅子」をふと思い出した。
福田氏が2007年11月10日に広島に来られた時に書かれた色紙が展示されていた。
「発見」「発想」「発展」。
この熟語の2文字目は、色を変えて重なるように書かれている。
まさに福田作品そのものを的確に表しており、大きく頷いてしまった。
常識にとらわれず、物事を多角的に見る柔軟さを教わったような展覧会だった。
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